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技術トレンド
技術トレンド

弊社が関連している業界における、最近の技術動向をお伝えいたします。

小型蓄熱バーナ「コバーナ」

はじめに

工業炉の多くは燃焼によりエネルギーを供給している。工業炉の熱効率を向上させ、消費燃料を削減することは、 ランニングコスト削減のみならず、省エネ、C O2削減の意味で重要課題である。
工業炉の効率向上は、排ガスによる熱損失を低減させる方法が一つの有効な手段であり、具体的には、金属式熱交換器(レキュペレータ)により排ガスの熱を回収し、 燃料用空気の予熱に利用する方法がある。
蓄熱バーナは、排熱回収率を向上させる技術として開発され、金属式熱交換器よりも遥かに高効率(80%以上)で排熱を回収することができる。
従来の一般的な蓄熱バーナは、バーナ自体に蓄熱体(セラミックハ二カム)配置し、基本的に二台一組のバーナを使用する。 そして、二台のバーナを交互に切り替えながら運転して、次のプロセスを繰り返すものである。
・高温の排ガスを蓄熱体に通し、蓄熱体を加熱する。排ガス温度温度は低下し、排ガスによる熱損失が低減される。
・加熱された蓄熱体に空気を通し高温の燃焼用空気を得る。
蓄熱バーナは高効率で排熱を回収できる技術であるとともに、炉内温度に極めて近い温度の高温予熱空気を得ることができる技術でもある。
蓄熱バーナを用いた燃焼技術は、大幅な省エネルギー・CO2発生量削減を実現する有望な技術である。

小型蓄熱バーナ「コバーナ」の開発

蓄熱バーナは注目を浴び、100万kcal/hr 以上の燃焼量をもつ大型バーナが鉄鋼業界などで普及しつつあり、長期間の連続運転にも対応している。 しかしながら数十万kcal/hr 以下の小型バーナについ及が進んでいないのが現状である(当社調査)。 そこで、当社は大型燃焼炉で使用されている蓄熱バーナの技術を小型化・汎用化して、食品工業・医薬品工業を始めとする各種業界を普及市場とし得る小型バーナ「コバーナ」を開発した。
「コバーナ」は平成十四年度大田区中小企業新製品・新技術コンクールで優秀賞を受賞するなど、高い評価を得ている。

コバーナの概要

(1)構造

小型蓄熱バーナはバーナ本体、回転式蓄熱体の二要素により構成される(図1)

図1 コバーナの構造

バーナ

バーナには、拡散バーナを使用し、用途に応じて、シングルバーナ・マルチバーナを選択することができる。
標準的な燃料はLPG ・都市ガスであるが、軽質油燃料(灯油など)にも対応可能である。

回転式蓄熱体
次の四要素により構成される。

・蓄熱体…非常に大きな伝熱面密度(比表面積)をもつセラミックハニカムを採用している。
・ケーシング…内部は上下に二分割されており、下チャンバーに燃焼用空気を供給し、上チャンバーから燃焼排ガスを排出する。
・蓄熱体回転機構…蓄熱体回転モーターはケーシング中心を貫くシャフトにより蓄熱体に連結されており、蓄熱体を回転させる。
・自動連続給油機構…蓄熱体とケーシングとが接する部分は、ガスリークがなく、且つスムーズに回転するよう当社独自の構造となっている。
さらに自動連続給油機構を設け、常時一定の耐熱グリースを供給している。

(2)原理

回転する蓄熱体の下半分に燃焼用空気を、上半分に高温排ガスを流すことにより、蓄熱体が一回転する間に、加熱・冷却を繰り返しながら高温排ガスの熱を回収し、 燃焼用空気を予熱する。
結果として、炉内温度が800℃以上であっても、排ガス温度は200℃程度まで低下し、大気温度の燃焼用空気は炉内温度近くまで予熱される。

(3)仕様

標準仕様として10000kcal/hr ・30000kcal/hr の二種類を用意している。30000kcal/hr 以上に対しては、設置台数を増やすことにより対応する。 また、用途に応じた自動点火、燃焼監視機能などの各種安全機能・自動運転機能を備えている。

(4)特長

@:排ガス熱損失が少ないので、従来バーナと比較し燃料代が半分以下となる。
A:排ガス温度が低いので、屋内排気をしても、温度が上昇しない。
B:燃焼用空気の予熱温度が高いので、燃焼効率の向上、NOxやCOの発生を抑制。
 炉への負担低減につながる。
C:前述の二台一組の蓄熱バーナと比較し、コンパクト・低コスト。

適用例

(1)過熱蒸気発生器

過熱蒸気とは、従来のボイラーからの飽和蒸気を圧力を加えることなく加熱することにより得られる100℃以上の水蒸気のことである。 現在、過熱蒸気は食品加工・環境設備などの各種熱処理工程(乾燥・乾留・熱分解・焼成…)において用いられており、今後もさらに幅広い用途での利用が期待されている。
当社の過熱蒸気発生装置(図2)は、コバーナを適用することによって、効率80%以上を達成し、従来のバーナや電気式に比べ燃料費を大幅に削減できる。
本装置は、シングルバーナを採用した燃焼室内に管を通し、管内を通過する蒸気を最高400℃まで加熱する。標準仕様として、燃焼量28000kcal/hr、 過熱蒸気発生量200?/hrの装置を用意している。 また、構造を簡略化するため、押込送風機を回転式蓄熱体本体に取り付け、1ユニット化した。


図2 過熱蒸気発生器


(2)各種過熱釜

加熱釜の下部、および側面にコバーナを採用した燃焼室を設けることにより、高効率の加熱釜を提供する(図3)。  当社は、用途に応じた燃焼設備設計・製作に対応するほか、コバーナの単体供給にも対応する。


(3)ガスレンジ

一般のガスレンジは「裸火」であるため、燃料のエネルギーの大半は厨房内に漏れ、厨房温度の上昇、エアコン・換気設備の付加上昇をもたらしてきた。
コバーナを適用したレンジ(写真)は、厨房への熱放出を絶ち、効率50%以上を達成し、燃料費を大幅に削減できる。また、マルチバーナを採用し、強火からとろ火まで、 幅広いターンダウンに対応する。
本装置は、燃焼量8500kcal/hr ×二口であり、従来の16000kcal/hr ×二口のレンジに相当する加熱能力を有する。外形寸法は、 幅1200?×奥行750?×高さ500?である。

(4)その他の適用例

上に掲げた用途のほか、現在、次の用途にも対応すべく開発を進めている。
@:800〜1000℃クラスの過熱蒸気発生装置
A:既存の厨房用蒸気釜への過熱蒸気発生装置の適用
B:800〜1000℃クラスの高温空気発生装置

おわりに

コバーナは、汎用部品として、各種燃焼装置に組み込むことも可能であり、技術供与を含め、各種業界への普及を図っていきたい。

特記:「コバーナ」は商標登録済み